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第3回 英訳編:「リニューアルする」は「renewal」?

外来語にまつわる問題は、実際に日本で作られた語を指しているわけではないという点にあります。例えば「スキンシップ」のような不思議な和製英語です。こうした語にはあまり問題はありません。翻訳者は、その語が英語に存在するかどうかを辞書で確認すればいいだけのことですから。

問題はむしろ、実際に英語でも存在する語にあります。しかも、非常に一般的な語でありながら、英語においては「自然」ではない用法で、日本語として用いられている語に問題があることが多いのです。

残念なのは、多くの人々が(時には、経験を積んだ翻訳者でさえも)、こうした「外来語」が無償のもの、歩道に落ちている100円玉のように思っていることです。そして、「カタカナ」として読み、それを正確にローマ字で表記するだけで良いのだと思ってしまうことです。

しかし私は、外来語というのは翻訳者にとって最大級の難点を提示していると主張したいのです。和製英語で使用されている外来語というのは、道路に落ちている100円玉などという話ではなく、路上に開いている大きな穴のようなものです。

ここで、私は外来語として非常によく使われている例を取り上げ、その語が日本語で用いられている形態が、英語本来の意味からどのくらい外れてしまっているかということを記したいと思います。

その語とは「リニューアル」です。

プレスリリースを扱う翻訳者ならば、ある会社が「ウェブサイトをリニューアルした」り、「製品をリニューアルした」という文脈で、頻繁にこの語に出会うことになるでしょう。

基本的な話をすれば、「リニューアル」という語は、すでに存在している何かに重要な変更が加わってより良いものになったことを示すために、そして「更新」(英語の「update」と近い意味でよく使われる語です)という語よりも根本的なところで用いられているようです。(例えば、webサイトの「リニューアル」と、webサイトの「更新」という語を比較してみてください)

さて、外来語が出てきたときに翻訳者が疑問を抱いたら、直接英語辞典(英和辞典ではなく)を引いてその英語が載っているかどうかを調べ、まずはその語が辞書に存在しているかどうか、次に基本的な英語の使用法を把握するのが最上の策です。

動詞の「renew(re + new)」という語を見てみると、既に存在している何かを新しくする、という意味において、日本語とぴったり同じ意味であるように思えます。

「リニューアル」という語は、英語の「renew」が持つ意味から大幅にかけ離れているわけではありませんが、これには、元の英語に伴う重要なニュアンスが多少欠けてしまっています。

ですから、これ以上面倒な作業をすることは止めて、英語の辞書に当たってみましょう。Dictionary.comにちょっとアクセスしてみると、「renew」という動詞には次の7つの定義があることがわかります。

-verb (used with object)
動詞(物に対して用いる)

  • to begin or take up again, as an acquaintance, a conversation, etc.; resume.
    知人、会話として始める、または再度取りかかる;再開する(resume)。
  • to make effective for an additional period: to renew a lease.
    期間の延長を有効にする:リースをrenewする。
  • to restore or replenish: to renew a stock of goods.
    修復する(restore)、または補充する(replenish):製品在庫をrenewする。
  • to make, say, or do again.
    もう一度作成したり、口に出したり、実行する。
  • to revive; reestablish.
    復活する(revive);復興する(reestablish)
  • to recover (youth, strength, etc.).
    (若さ、力、等)を回復する(recover)
  • to restore to a former state; make new or as if new again.
    以前の状態に復元する(restore);新しく作るか、そのように見える。

上の定義それぞれを検討し、言い換えてみることで、7つの定義すべてに共通して言えることを考えてみましょう。

  • この場合は、過去に存在していた何か(例えば友情や会話など)が、空白期間を経た後に再開されること。
  • これは、例えば契約や運転免許など、その時点に至るまで存在していたものを延長する際によく用いられるケース(1と異なる点は、「古いもの」と「新しいもの」の間には空白期間が存在しない)。
  • これは、以前と同じ「古い」製品であったとしても、再び製品で一杯にする必要がある倉庫などの状況です。
  • この定義は、「品質に対する私たちのコミットメントをrenewする」「私たちの結婚の誓いをrenewする」といった場合の表現に相当します。この場合、ある重要な原則が再度強調されますが、必ずしもその存在がなくなったということを表しているわけではありません。
  • 基本的に、存在しなくなった、あるいは弱まっていたか悪い状態に陥っていたものが、元の(良い)状態に戻ることを指します。ただし、必ずしも最初に存在していたものよりも良いわけではありません。
  • 5と非常に類似しています。弱くなったまたは悪化していたものが、元の(良い)状態に戻ることです。
  • 6と似ていますが、人間よりも物が関与する場合を意味するようです。

いま見たように、こうした定義はかなりの点で重複しています。しかし私はこれらに共通した点は、過去の状態や状況に戻ること、またはその状態が継続することのどちらかの意味に近いと思います。さらにもっと単純に言うならば、古くなった何かをもう一度新しくするという意味になります。

これとは対照的に、日本語の「リニューアル」ではむしろ、古いものを単に復活させるというだけではなく、輝くような新しいものにするという使い方をしています。ちょっとした新しいひねりを加えて、それまでの古いバージョンよりも高水準、または異なる水準のものとなり、現在それが存在しているということです。「リニューアル」と「renewal」の2つの語は非常に似ていることは明らかで、だからこそ、外来語が生み出す途方もない混乱が起こるのです。しかしこの2つの語は、別々の概念として考えたほうが良いようです。

「リニューアル」を英訳するときに、renewalの代わりに対応する別の一語を見つけ出せば良いという単純な問題ではありません。ただし、ほかに考えられる語がないときには「revamp(またはrevamped)」という語を使うのが、一般的にはより良い選択肢となります。

例えば、ウェブサイトについての例文に戻ってみましょう。新しい項目が加えられてデザインが新しくなったという場合に「redesigned website」とするのはよく見られます。あるいは、加えられた変更というのが主としてコンテンツの大幅な追加であるという場合には「expanded website」という語が使われるかもしれません。

言い換えれば、変更の実際の内容について考え、デザイン変更(redesign)、改良(revamp)、改装(remodel)、など「re」の接頭辞が付いていてもそうでなくても、その変更内容にもっとも合致した語を選ぶということが重要なのです。

最後に、選んだ語が広く使われている語であってもそうでなくても、Googleその他の検索エンジンで検索し、何件ヒットしたかを調べるほうが良いでしょう。

もちろん、世の中には怠慢な翻訳者がいるので、Googleは最も曲解されている英語に対しても、そういう情報を引き出してくること請け合いです。ですから、ヒット件数だけでなく、引用元がどこなのか(例えばNew York TimesやThe Economistの使用例が混ざっていることがわかれば、ほっとため息をついて良いということになります)についても確認するようにしましょう。

単に「renewal」を選ぶという「頭を使わない」ことに比べれば、こうした調査は時には退屈な作業に思えますが、実際のところ、近道はないのです。

ですから、外来語を英語ではなく日本語として扱うことを覚えておきましょう。単に、その語が英語でも同じ意味で使用されると思い込むことの決してないように。

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