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第4回 和訳編:「the biggest」は「最大級」?

最上級表現はビジネス文書に頻出します。特に、プレスリリースでは「○○社は、このたび〜について世界最大のセンターを構築しました」といった文章がかなりの確率で登場します。

「We opened the biggest center in the world.」という文章を、「世界最大級のセンターを開設しました」と訳してある例をしばしば見かけますが、わたしはこれを「最大」と書き換えます。なぜでしょうか?

<日本語の定義>
大辞林で「−級」(接尾辞)を引いてみると、

  • ある規定に基づいて定められた程度・段階などを表すのに用いる。*「一―建築士」*「珠算三―」
  • そのものに匹敵するものであることを示す。*「大臣―の大物」*「プロ―の腕前」
  • 助数詞。* (ア)階段の一つ一つの段を数えるのに用いる。* (イ)学校で学級を数えるのに用いる。

とあります。

<英語の定義>
ジーニアスで「-est」の項を見てみます。すると、

  • 【接尾】1音節語, 時に2音節語について]形容詞・副詞の最上級を作る(→more 【副】2[語法];cf. _er1)_highest.−est
  • 【接尾】((古))人称単数代名詞 thou に伴う動詞の現在・過去形を作る_Thou goest. なんじは行く

この2つの意味が記されていました。

<例文>
-estが持つ上記の1の意味に対応する例文を挙げてみます(2は古語なので省略)

  • Okinawa Churaumi Aquarium is the largest aquarium in the world.
    「沖縄美ら海水族館は世界最大の水族館である」

ここで、「最大級」としてしまうとどうなるか。上の<日本語の定義>(2)をもう一度引用します。「(2)そのものに匹敵するものであることを示す。* 「大臣―の大物」*「プロ―の腕前」とあります。「大臣級」とは、大臣そのものではありません。同じく「プロ級」というのも、プロではなく「(アマチュアだけど)プロと同じくらい上手い」という意味ですね。

つまり、「最大級」としてしまうと、「最大のものと同じくらい」であるという意味になります。「ただひとつの地位である最大」ではないことになってしまうのです。よって、英語の最上級、the largestの訳語としては「最大」を使う。これは中学校で習う文法です。たまには初歩の文法の復習をしてみるのも、目から鱗が落ちる体験になることでしょう。

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